過去日記 PART?

2001年5月3日

丁度、龍司と連絡が取れなくなった頃、私の方にも考えなければならない事が起きていた。

「進路問題」である。

そう、中学3年生・・・一応受験生であった。

担任から、市外の高校の推薦を勧められた。
日大の付属高校で、スポーツの盛んな高校だった。

小樽の片田舎の中学校では何の自慢にもならないが、一応、陸上部のエースだった。
学校の短距離の歴代記録を片っ端から塗り替えていたし、成績もそこそこだったので、担任と陸上部の顧問が勧めてくれたのだ。

難点と言えば、寮生活になってしまう事・・・
それでも、私の中では行きたい気持ちの方が強かった。
頭の片隅に龍司の顔が浮かんだ。

「考えてみます。親とも相談しなくてはならないし・・・」

曖昧な返事をして、その高校の入学案内書を受け取った。

学校の帰りに、電話ボックスから龍司に電話を入れた。
やっと繋がった。
喜んだのもつかの間、聞いた事の無い龍司の沈んだ声が、耳に飛び込んできた。

「どうしてもお前の事は妹のようにしか思えないから、もう付き合えない・・・色々と考えたい事もあるし一人になりたい・・・」

私は妹でも良いから・・・と食下がったが、彼は

「それじゃあ、お前に悪いから・・・」そう言って、電話を一方的に切った。

不思議と涙は出なかった。
自分はどうしても、前の彼女には勝てなかったんだと思った。
そして、龍司の冷え切った声を聞いた時に、私の心の中で決心が付いた。

『日大の付属の高校に行こう・・・』

当然、両親は反対だった。私立でお金が掛かるし、何より寮生活をする事になるのだから、反対されても当然である。
でも、私は時間を掛けて、説得する自信はあった。
担任にも、行く事に決めたと告げ、「今、親を説得中です」と報告した。
願書を取り寄せる所まで話は進んでいた。

高校入試に頭を切り替えようと必死だった。
だが、幸か不幸か、龍司の噂が耳に入ってくる。

「野球部、辞めたらしいよ」
「学校も行ったり行かなかったりみたいよ」

電話で言っていた『色々と考えたい事』ってこの事だったのだろうか・・・

季節も冬が近付き、願書提出も間近に迫ったある日の夜、一本の電話が掛かって来た。

たまたま、自分の部屋で私が最初に出た。
耳に飛び込んできた、聞き慣れた声に、心臓が止まりそうになる。

「俺、判る?」

忘れるはずが無い、あんなにも好きだった人の声・・・一方的に別れを告げられても、それでも好きだった人の声である。

「どうして・・・」

戸惑っている私に、彼は以前の優しい声で

「やっぱり、俺の事を判ってくれるのはお前しかいないから・・・」と言った。

今考えれば、「なんて勝手な」って思うけど、そこは惚れた弱みで・・・(笑)
また付き合おうと言う話になり、その日はそのまま長電話をしたのである。

野球部は休部している事、一時は学校もサボってたけど、今はボチボチ行ってる事、両親が別居した事を龍司は話してくれた。

私は志望校の話をした。

【ここで、私の人生は大きな岐路に立った。
 今思えば、どうしてもっと冷静に考えられなかったのか?
 どうして、自分の夢を捨ててしまったのか・・・
 どうして・・・】

日大の付属高校に行こうと思ってる事、そこに行くと寮生活になる事を告げると、龍司は

「そんな所に行ったら逢えなくなるじゃないか」と声を荒げた。

私にはそれが嬉しかった。

「私だって、またこうして龍司と付き合えるようになったのに・・・迷ってしまうよ・・・」

「だったら行くなよ、俺の側に居ろよ」

彼のその一言で、私はあっさりと志望校を変更したのである。

恋をすると人は盲目になる。
まさにその通りである。

担任には「どうしても親が反対しているので諦めます」と告げた。
そうして、自分の実力からしたら、かなりレベルを下げた市内の工業高校に願書を提出したのである。

【あの時、日大の付属の高校に行って、陸上を続けていたら、
 私の人生はどうなっていただろう?と何時も思う。
 あの時、龍司ではなく、自分の夢を選んでいたら、
 これから先に起こる事件は起こらなかったのだろうか?
 それとも、どちらを選んだにしても、
 あれは避けられない運命だったのだろうか?】

久しぶりに会った龍司は、何処か擦れたような感じがした。
タバコを吸い、お酒を飲み・・・
まあ、高校生なら、誰でもやっている事だか、今まで野球一筋だった彼からは想像が付かなかった。

再び付き合える様になってからと言うもの、私は彼の前で、一段と無口になっていた。
彼が何を考えているのか、私の事をどう思っているのか、気が気ではなかった。

雪も降り始めたある日、龍司の別居中の母親の家へ案内された。
彼の家には何度か行った事があるが、お母さんの別居先は初めてだった。
雑居ビルの一階が飲み屋で、二階が住居だった。
彼のお母さんはその一階で飲み屋をやっていた。
最近は、どうやらここで寝泊りしているらしかった。

「今日友達も来るから・・・」

学校帰りで制服のままの私に、龍司はそう言った。

「中学の時からの悪友達(笑)そいつも中3の彼女がいてさ、ユッコって言うんだけど、そのユッコが学校で友達居なくてさ〜ユッコの友達になってやってくれよ」
と、龍司は言った。

【・・・そう・・・以前この日記に登場した「ユッコ」である。】

彼女との出会いであった。

〜つづく〜

★★★今日の夕食★★★

有名な「山頭火」行って来ました。
「トロ肉塩ラーメン」

トロ肉・・・美味しかったけど、ちょっと胸焼け(笑)

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