過去日記 PART?

2001年5月5日

3月5日
忘れもしない「公立高校入試一日目」

受験会場である工業高校の教室の前で、ユッコは私を見つけ駆け寄ってきた。

「教室別になっちゃったね」

彼女は心細そうであった。

「ねえ、龍司から電話来なかった?」

何気なくユッコはそう聞いて来た。
私は首を横に振った。
それ以上、彼女は何も言わなかったし、私も特に疑問も持たなかった。

私達が音信不通になってる事を、ユッコは知っていたし、高校入試を前に、龍司が電話をして来たのかと、彼女は聞きたかったのだろう。
それ位にしか思わなかった。その時は・・・

一日目の受験はまずまずで終え、自宅に戻る。
夕食までの時間、居間でゴロゴロしていると、電話が鳴る。

クラスメートだった。
龍司を紹介してくれた、H高校野球部の子と付き合っていたあのクラスメートある。
彼女とは小学校が一緒だったので、初めは仲良くつるんでいたが、段々と別グループになり、学校以外での付き合いは無くなっていた。
その彼女が、突然自宅に電話してきたのである。
小首を傾げながら、私は

「どうしたの〜?」と切り出した。

「え?ううん、受験どうだったかな〜と思って・・・」

「うん、今日はまあまあだったよ」

「所でさ・・・」
彼女は切り出した。

「ゆかりの家、夕刊採ってる?もう来てる?」

「え?来てるけど?」

彼女の何時も通りの明るい声に、私は何の疑問も持たず、答えた。

「そう、ならいいんだ。うちまだ来てないもんだから・・・じゃあ、明日も頑張ろうね!」

そう言って、彼女は電話を切った。
私は『珍しいな〜』と思いつつも、そんな電話の事は忘れ、夕食を取った。

居間で先に夕食を食べ終わった父が、夕刊に目を通していた。

「えびかご船の16歳が海中転落だと・・・」漁師である父が、ポツリと記事を読み上げた。

『16歳?』胸がざわめいた。

「小樽の高島の子じゃないか。この時期だと助からんな」

私は父から新聞を取り上げ、記事に目を走らせた。
クラスメートの言葉が頭を過ぎる。

『夕刊来てる?』

・・・間違いない・・・龍司だ・・・どうして?どうして彼が船なんかに?

私はその記事が載ったページを持ち、電話を二階に切り替え、自分の部屋へ駆け込んだ。
頭の中が真っ白だった。
どうやって、ダイヤルを廻したかさえも覚えていない。

ただ、ただ、体中が、ガタガタと震えているだけである。

「・・・まだ知らないみたいだったから・・・言えなかったの。私の口からは言えなかった・・・」

先程のクラスメートの言葉である。
彼女も新聞を見て、驚いて私に電話を掛けてきたが、とうの私はまだ事件の事を知らず、暢気に話してたから、彼女は言い出せずに電話を切ったのである。

その後、親友の所にも電話をしたと思う。
親友は、確か、慰めてくれたと思う。

「きっと、すぐ見つかるよ」と言われた気がする。

しかし、その言葉は慰めにはならなかった。
漁師である父が、冬の海の怖さを知っている父が漏らした一言

「この時期だと助からんな・・・」

この言葉が胸に大きくのしかかる・・・

私は電話の側で膝を抱えてうずくまった。
とにかく、震えが止まらないのである。体が冷たくなって、冷汗が出て来る。

人間は本当に悲しい時には、泣けないんだと初めて知った。

あんなに泣き虫だった私が、涙を流す事も、泣き叫ぶ事も出来ないのである。

今思えば、ショック状態で、血圧も下がっていたのだろう・・・

当然、明日の受験2日目所の騒ぎではない。

〜つづく〜


★★★今日の夕食★★★

小樽の実家にて
お刺身
豆腐とワカメのお味噌汁

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